●● 離婚でよくある誤解 ●●
▼誤解① 公正証書にしなくてもよい・・・×
夫婦の話し合いによって離婚する協議離婚では、調停や裁判による離婚のように、調書や判決書等のような書面が裁判所からは発行されません。
そのため、離婚に際し、夫婦で合意したことをきちんと記録に残しておくための「離婚協議書」を作成するのが一般的です。
ところが、離婚協議書で定めた財産分与、慰謝料、養育費等の金銭面での離婚給付が行われない場合、この離婚協議書を基に裁判を起こし勝訴判決を得なければ強制的に支払いさせることはできません。(その際、時間と費用が大幅にかかることになります)
そこで、離婚協議書を公正証書にしておけば、当初こそ作成費用はかかりますが、滞納後の差し押さえ手続きが裁判をしなくても可能になり安心です。
また、誰も給料などの財産差し押さえを受けたくありませんから、公正証書の方が契約内容が守られやすいというトラブル予防的なメリットがあります。
▼誤解② 離婚するには慰謝料が必要だ・・・×
離婚には慰謝料が付き物とお考えの方がいますが、必ずしもそうではありません。
協議離婚するためには夫婦間の合意があればよく、離婚原因の有無は問いません。したがって、協議離婚では多くの場合、「性格の不一致」が離婚の理由として挙げられます。
この「性格の不一致」による離婚の場合では、夫婦の一方側だけに離婚の原因があることになりませんから、双方に慰謝料請求の問題は発生しないのです。
▼誤解③ 離婚届を先に出したい・・・×
離婚協議書が先か、離婚届が先か、法律上のルールはありません。
しかし、通常は先に離婚協議書の締結をしたうえで役所に離婚届を提出するのが一般的です。
なぜなら、先に離婚届が受理されてしまうと、夫婦は法律上赤の他人になってしまいますから、その後の離婚協議に応じなかったり、まとまらない可能性が大きくなるからです。
夫婦であるからこそ、あるいは離婚したいからこそ、双方がまとめようと努力する話し合いも、一旦離婚した後からでは気持ちも離れ、すれ違いや言い分の違いが大きくなって、一方に不利な条件になりやすくなります。
離婚協議を面倒がらず、先に離婚条件を離婚協議書でしっかり固めておくことが後々のために大切です。
▼誤解④ 協議書はネットで調べれば自分で書ける・・・×
基本、裁判でさえ弁護士の力を借りずに本人訴訟は可能ですから、法律上、自分でできないものはありません。
その上で、三つの点で注意が必要です。
一つは、ネット情報は玉石混交、必ずしも信頼できない情報も含まれていることです。たとえ、それが離婚専門情報サイトであったとしても、その内容のすべてが正しいとは限りません。
二つ目は、 離婚する夫婦ごとに、合意する内容は異なることです。
まったく同じ条件で離婚する夫婦なんていませんよね。そのため、ネット上の離婚協議書の最大公約数的なひな型と実際の離婚条件が完全に一致することはまずありません。
したがって、ひな型の項目を書き加えたり、削ったり、調整したり、工夫する必要があります。この過程で、離婚協議書の条件項目について、しっかりチェックできるかが鍵となります。
三つ目は、コストパフォーマンスの問題です。
自分で、見よう見まねで調べるとなると相当な労力と時間がかかりますし、はたして出来上がったものはこれで良いのか?という疑問も残ります。
公証役場の人は、あくまで公平な立場ですので、差押えができないとわかっていても、そこを指摘しないのが原則です。公証人に何も言われなかったから大丈夫と安心しないでください。
離婚は人生において重要な分岐点です。
そこで夫婦双方が確認する内容は、その後の子どもたちの長い人生をも左右するものですから、間違いのないものが求められます。
行政書士は、書類作成のプロとしての国家試験に合格し、必要な研修を済ませ、経験と独自の専門的ネットワークを持っています。この点が一般の方とは異なると思われます。
▼誤解⑤ 親権者が再婚したら養育費は払わなくてよい・・・×
再婚相手に連れ子の養育義務はありません。
ただし、民法880条では「扶養にかかる協議または審判があった後事情の変更が生じた時は、家庭裁判所は、その協議又は審判の変更又は取消しをすることができる」とあります。
つまり、「事情の変更」があったと家庭裁判所が認めれば、養育費の減免も可能となるわけです。
そのためには、
①再婚相手と連れ子が養子縁組をする。
②再婚相手に経済力が十分にある。
これらのことが整ったうえで、養育費が減免されることもあります。
▼誤解⑥ 離婚公正証書ができたら離婚したことになる・・・×
離婚協議書(公正証書)と離婚届は全く別物です。
離婚協議書は、公正証書にしたとしても、離婚に際して取り決めた離婚条件の確認でしかありません。
これに対し、離婚届は法律に基づいて協議離婚するための届で、離婚するためにはこれを市町村役場に届出して初めて離婚したことにはなります。(戸籍法76条)
したがって、通常は離婚協議書を作成した上で、離婚届を提出するのが一般的で、離婚協議書の中に離婚届の届出時期、届出者についても合意しておきます。