【裁判所ビデオ】
●養育費
父母が協議上の離婚をするときは、子の監護に要する費用の分担は、その協議で定めることになっています。(民法766条1項)
養育費は基本的に、子どもが成人(高校、大学、専門学校卒業)するまでに必要な費用などを、子どもを養育しない他方の親が支払うものです。
子どもが成人に達しても生計を立てることができない場合、「養育費支払義務」ではなく、直系血族の「扶養義務」としての生活費支払義務が生じます。(民法877条)
離婚すると一方だけが親権者(あるいは監護者)になりますが、他方が親でなくなるということではありません。
いずれの親も子どもに対して扶養義務を負っています。(子どもからすれば、「扶養請求権」があることになります)
養育費の義務は、「生活保持義務」とされており、扶養義務者に経済的な余力がない場合であっても、被扶養者に対し支払義務者の生活と同質で同程度の生活を保持させる必要があります。
*これに対して「生活扶助義務」は、扶養義務者が経済力に余力があり、要扶養状態にある権利者に健康で文化的な最低限度の生活を援助する義務を意味します。扶養義務者が自己の生活を犠牲にすることなく、余裕がある限度で援助すれば足りる点で「生活保持義務」とは異なり、「生活扶助義務」は未成年・配偶者「以外」の親族一般に対する義務とされています。
養育費の分担は、父母が婚姻している間は「婚姻費用」の分担(民法760条)、離婚している場合には「養育費」の問題になります。(民法766条)
養育費の支払始期は、実務上、権利者が請求したときから支払義務が生ずるとしています。
養育費の金額は父母の話合いで決めるのが原則ですが、裁判官の作成した「養育費算定表」が参考になります。
養育費は子どもが成人に達するまで継続的に支払いがされないと意味がありません。
継続的に払えないような金額を決めると、すぐに支払いが滞ったり、減額請求されるなどの紛争が生じることになります。
養育費支払いの合意ができたとしても、継続的に養育費を受け取る為には必ず書面に残し、証拠を残さなければなりません。
ところが、養育費を継続的に受け取っている家庭は20%ほどと言われています。
養育費を確保する最善の方法は「離婚公正証書」を作成することです。
離婚公正証書があれば、いざ相手からの養育費が不払いとなっても「強制執行」で養育費を回収することが可能です。
具体的には、離婚公正証書に「強制執行認諾約款」(養育費や慰謝料を支払わなければ、強制執行を受けますという文言)を記載しておき、もし約束に反して養育費が延滞した場合でも、強制執行をすることができます。
強制執行には、以下の2つの方法があります。
①直接強制(差し押さえ)
この強制執行によって、裁判所が支払い義務者の給与や預貯金などの財産を強制的に差押さえ、不払い分を回収することができるようになります。
一度の滞納で将来に渡って給料からの天引きができるので、定期的な収入がある場合には、安定した支払いを確保できるようになり安心です。給料の2分の1までの金額を差し押さえられます。
債務者の住所地を管轄する地方裁判所に申し立てることになります。
②間接強制
約束した支払いがされない場合に、一定の制裁金を支払うよう裁判所が命じて、履行を心理的に強制する制度です。
例えば「支払するまで1日ごとに○円を支払え」であったり、「〇月○日までに支払わなければ○円を支払え」という決定がされる場合もあります。
相手の給料や財産を把握しないとできない直接強制に比べて、相手の居所だけわかっていれば手続きできる間接強制の方が簡易です。
養育費は、成長段階に必要な監護養育の需要を満たすべきものでなければなりません。
したがって、特別な事情がなければ一括払いを認めず、定期金による支払いによるべきだとするのが審判例です。
つまり、養育費は継続的に支払うもので一括払いは望ましくありません。(権利者が浪費する恐れがあります)
但し、義務者がすぐに仕事を辞めてしまう、浪費や放浪癖があるなど、長期にわたる確実な支払いが期待できない場合などは、相手の性格や資力にもよりますが、一括払いの方が望ましい場合もあります。
月々の支払額、支払日、支払方法、支払手数料負担、支払日が休業日の場合、支払期間、事情変更、進学時の費用等について話合いで決めておきます。
なお、権利者が、公的扶助(児童手当、子ども手当等)を受給していたとしても、義務者が分担義務を免れたり、養育費を減額するということにはなりません。