●寄与分
・相続人の中に被相続人の事業を手助けしたり、その療養看護に尽くしたりして、被相続人の財産の維持・増加について特別の寄与をした者がいるとき、その特別寄与の分を寄与者の相続分に上乗せして受けられる制度です。(民法904条2)
・相続人でない、例えば相続人の配偶者には基本的には認められませんが、相続人と同一視して相続人の寄与分とする場合もあります。
・具体的には、次のようなものが考えられます。
①家業従事型・・・給料を貰わず、または著しく安い給料で父親の農業や家業を長年手伝ってきた場合など
②財産出資型・・・共稼ぎの夫婦が夫名義で自宅を買った場合や、父親に無利息でお金を貸したり、父親の借金の返済をした場合など
③療養看護型・・・お金を貰わずに、病気で療養している父母の療養介護を行った場合など
④扶養型・・・お金を貰わずに、父母を継続的に扶養してきた場合など
⑤財産管理型・・・お金を貰わずに、父親の持っている不動産の管理をして、父親が管理費用の支出をしなくて済んだ場合など
・もともと夫婦間には同居・協力・扶助義務(民法752条)があり、直系血族・兄弟姉妹には互いに扶養義務(民法877条1)があります。
・したがって、身分関係に基づいて通常期待される程度を越える貢献をした場合で、親子間の扶養義務の範囲内の行為は特別の寄与とは認められません。
・寄与分の主張は、遺産分割協議の中で、客観的な裏付け資料を示して説明することになります。
・相続人全員の同意が得られれば、寄与の主張した相続人が、まず相続財産から寄与に相当する部分を受け取り、更に残りの相続財産を相続分で分割し受け取ることになります。
・遺産分割協議での話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所に調停の申立をして解決することになります。
『法律の抜け穴』(自由国民社)
●特別受益
・特別受益とは、共同相続人の中に故人から遺贈を受けていたり、生前に贈与を受けていたなどの場合、相続分の前渡をされていたものと考え、その者の相続分を減らすことによって相続人間の平等を図ろうとするものです。(民法903条)
・特別受益が認められるのは、相続人のみです。相続人以外の第三者が受益を得たとしても、それは特別受益にはなりません。
・生前贈与で特別受益とされるのは、①婚姻や養子縁組のための贈与 ②生計の資本としての贈与 の2つです。
・特別受益の主張は、遺産分割協議の中で、客観的な裏付け資料を示して説明することになります。
・特別受益がある場合、遺産の総額にその特別受益分を足します。この「遺産総額+特別受益分」のことをみなし相続財産と言います。
・そして、みなし相続財産を、法定相続分に応じて割り算します。このとき、受益者の取得分からは、特別受益分を差し引きます。そうすると、各自の取り分が計算できます。(特別受益の持ち戻し)
・遺産分割協議をしても受益者がその事実を認めなかったり、特別受益の評価について合意ができなかったりする場合には、家庭裁判所で調停の申立をして解決することになります。