●相続人
・相続人となる人の範囲は民法によって定められています。これを「法定相続人」といいます。
・法定相続人は、原則として ◎亡くなった人の配偶者 ①子(直系卑属) ②父母(直系尊属) ③兄弟姉妹 です。
・この法定相続人の範囲は変わることはありません。
・相続には、残された家族や親族の生活の基盤を守る役割もあるため、相続人になる順番(上記①②③)が決められています。
・ただし、◎配偶者は常に相続人になります。
・上位の順位の相続人がいれば、それより下の順位の人は相続人になれません。
・また、同じ順位の相続人が数人いるときは、その全員が相続人になります。
・代襲相続は、本来相続人になるべき人が被相続人の死亡よりも前に死亡していたり、相続欠格や相続人廃除によって相続権を失った場合に、その人の子が代わりに被相続人の相続をすることをいいます。(相続放棄には代襲相続はありません)
・例えば、父が亡くなった際に、父より前に死亡した子の子(被相続人の孫)が父を相続するような例です。
・被相続人の配偶者や直系尊属からの代襲相続はありませんので、これらの人がいない場合には相続権が次順位の法定相続人に移ります。
・代襲相続はどの法定相続人でも発生するわけではなく、被相続人の子または被相続人の兄弟姉妹からしか発生しません。
・孫が死亡している場合は、さらにその子(ひ孫)と代襲ていきますが、兄弟姉妹の場合はその子(甥姪)までです。
・代襲相続人は被代襲者(本来の相続人)が有していた以上の相続権を承継できないので、複数の代襲相続人がいる場合には、他の相続人と比べて相続権が小さくなります。
・被相続人の直系卑属でない人には代襲相続権がないので、被相続人の養子からの代襲相続(養子の子の代襲相続権)については出生時期によって判断されます。(民法887条2項ただし書き)
●相続人になれない人(民法891条 相続人の欠格事由)
①故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
③詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
④詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
『法律の抜け穴』(自由国民社)
●内縁関係について
内縁関係とは、一緒に生活しているなど事実上は婚姻関係にあるものの、婚姻届が未提出であるために、法律上では配偶者として認められていない関係のことを意味します。
内縁関係には、法律において夫婦と同等の義務権利が認められている項目と、夫婦とは区別されている項目があります。
【夫婦と同等の権利義務】
①貞操義務
②同居・協力・扶助の義務(民法752条)
③婚姻費用分担の義務(民法760条)
④日常家事の連帯責任の義務(民法761条)
⑤帰属不明財産の共有推定(民法762条)
⑥財産分与(民法768条)
⑦嫡出の推定(民法772条2項)
(特別法で夫婦と同様にみなされる項目)
①遺族補償年金を受ける者としての配偶者の権利
②労働災害の遺族補償を受ける労働者の配偶者の権利
③退職手当を受ける者としての配偶者の権利
【夫婦とは区別され、内縁関係には認められない権利義務】
①夫婦の同姓(民法750条)
②成年擬制(未成年者が結婚によって成人として扱われる制度(民法753条)
③準正(非嫡出子が父母の婚姻によって嫡出子の身分を取得する制度(民法789条)
④配偶者の相続権(民法890条※ただし958条の3)
●養子縁組について
「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の一番の違いは、元々の親子関係が継続するか否かという点にあります。
実親との親子関係が続く普通養子縁組では、養子となった子であっても、実親の相続人となることができます。
つまり、養親の相続人でもあり、実親の相続人でもあるということです。
一方、実親との親子関係が終了する特別養子縁組では、養子となった子は、実親の相続人となることはできません。
特別養子縁組とは、実の親との親子関係を断ち切って、養親と新たな親子関係を生じさせる養子縁組です。
戸籍上も、実親の戸籍から養子を抜き出すことで、親子関係を切ります。
普通養子縁組の場合と違い、実親との親子関係が無くなります。
したがって、特別養子縁組で養子になった人は養親の財産を相続することはできますが、実親の財産を相続することはできなくなります。
また、養子になった人が実親と養親よりも先に亡くなった場合、養親は法定相続人になりますが、実親は法定相続人になりません。
●養子の子の代襲相続について
民法第727条
養子と養親及びその血族との間においては、養子縁組の日から、血族間におけるのと同一の親族関係を生ずる。」
民法887条
被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第891条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の※直系卑属でない者は、この限りでない。
※ここでの直系卑属でない者とは、次のように判断されています。
①養子縁組前に生まれた養子の子は、養子の親との間に何ら血族関係はなく「被相続人の直系卑属でない者」であり、代襲相続ができない。
②養子縁組後に生まれた養子の子は、養子の親と血族関係になり、「被相続人の直系卑属」であり、代襲相続ができる。
(大判昭和7年5月11日)