●相続分がないことの証明書
「相続分がないことの証明書」は別名「特別受益証明書」、「相続分皆無証明書」などとも言われるものです。
これは、「自分は被相続人から相続分以上の生前贈与を受けたので、これ以上自分の相続分はありません」という往々にして事実と異なる内容を記載する場合があります。
もちろん、書類の内容通りに生前贈与を受けていれば問題はありませんが、実際にはそのようなことは身に覚えもなく、相続人間で他の相続人に対し、「相続分を辞退させるための手段」として使用されることがあります。
つまり、本来ならば相続人全員による遺産分割協議が必要であるにも関わらず、この書面を他の相続人に送付して署名押印(実印、印鑑証明書添付)を貰いさえすれば遺産分割協議をしなくても、一人で財産を独占できるという手法です。
「相続分がない」ことを認める書面ですので、遺産分割がすんでしまったものとして扱われる可能性があります。
送り付けられた相続人としては「自分は被相続人から相続分以上の生前贈与を受けたことはないが、とりあえず受けたことにしておこう。自分にも相続分はあるけれど、無いことにした方が相続を進めやすいならそうしてください。後で実際の相続について話合いましょう。」という善意のつもりで署名したのに、実際には額面通りに処理され、結局、相続分は何も無く終わってしまうこともありますので注意してください。
仮に、自ら相続分をどうしても辞退したいという奇特な?相続人がいたとしても、原則通り遺産分割協議の話合いの中で、自らの意思によってその旨を表明し、遺産分割協議書に記載すれば良いだけの話であって、協議もしない内から一方的に送り付けられ、署名を求められる筋合いのものではありません。
また、逆に安易にそのような虚偽の内容の書面を求めることもしてはならないことであって、後々の遺産分割が紛糾することにつながりかねません。
万一、他の相続人からそのような書類に「署名、押印して返送してくれ」と頼まれた場合は、よく話を聞いた上で慎重に対処されることをお薦めします。