●農地の遺贈
1.一般原則
農地(田・畑)の名義変更(売買や贈与)には、「農地法の許可が必要」で、農地の効率利用のため、農地法の許可が下りなければ農地(田・畑)を取得できません。
2.遺産相続の場合
遺産相続は例外とされ、相続により農地の名義変更を行うときは、「農地法の許可は不要」という扱いになっています。
3.遺贈(遺言)の場合
遺贈の対象に農地(田・畑)が含まれることがあります。
遺贈には「包括遺贈」と「特定遺贈」という2種類があります。
(1)包括遺贈
包括遺贈とは「全財産をAに遺贈する」というように財産を特定せず包括的な遺言書がある場合です。
結論から言いますと、包括遺贈の場合は「農地法の許可は不要」です。
包括遺贈を受けた人(包括受遺者)は、相続人と同じ権利義務を持ちます。
したがって、相続による名義変更は「農地法の許可が不要」という取扱いです。
(2)特定遺贈
特定遺贈とは「甲土地をAに遺贈する」という財産を特定した遺言書がある場合です。特定遺贈は2つの類型に分かれます。
①相続人に対する特定遺贈
例えば、「甲土地(農地)をB(子)に遺贈する」という特定遺贈の旨の遺言書があったとします。
この場合、名義変更にあたり「農地法の許可は不要」という取扱いになります。相続人へ特定遺贈をするときは、相続に準じて扱われ、農地法の許可は不要です。
②相続人以外に対する特定遺贈
例えば、「甲土地(農地)をC(孫)に遺贈する」という特定遺贈の旨の遺言書があったとします。
この場合、名義変更にあたり「農地法の許可が必要」という取扱いになります。相続人以外へ特定遺贈するときは、贈与に準じて扱われ、農地法の許可が必要になります。
したがって、①と②では結論が真逆となります。
以上をまとめますと、次のようになります。
・相続のとき=農地法の許可不要
・包括遺贈のとき=農地法の許可不要
・特定遺贈(相続人への)=農地法の許可不要
・特定遺贈(相続人以外への)=農地法の許可必要