●● 遺言をお勧めするケース ●●
遺言書は被相続人のこの世における最後の意思です。
それは可能なかぎり尊重すべきは当然です。
遺言書の究極の目的は、自分亡き後、配偶者や子どもたち相続人の間でもめ事が起きないようにすることです。どうしても遺産分割協議は誰かが有利になり、誰かが不利になります。それほど簡単にまとまるものではありません。
ご自分の相続でしっかり「絆」を守ることができるかは、被相続人の行動に掛かっています。
ゆえに結論的に申し上げたいことは、遺言書を作成することは、去りゆく者の「責務」であるということです。
あなたの周りには、遺言を作っておいてもらいたい人がいるものです。
その方の「期待」に応えるか、応えないか一度じっくり考えてみてください。
■ケース① 相続人が一人ではない
ほとんどのケースが当てはまることになります。
相続人が「複数」いれば遺産分割協議が当然に必要になります。
「協議」といっても「言い出しにくい」「立場的に逆らえない」「言った者勝ち」「泣き寝入り」「もめたくない」「穏便にすませたい」「気が重い」というのがそれぞれの実態です。
ちょっと意外な感じがするでしょうが、争族あらそいの登場人物というのは、叔父や姪、婚外子などではなく、家族内の対立(兄弟姉妹)が大半です。これらの”内輪もめ”を紙切れ1枚で押さえ込めるのが遺言書です。使わない手はないのです。
遺言があれば、相続人にとってこの協議をしなくても済みます。
これは、相続人の精神的労力的負担を大幅に軽減し、その後の手続きもあっという間に終了します。これは相当のメリットです。
欧米では遺言を残すことは当然の風習であり、「遺言を残さず亡くなると家族に災いを残す」とさえ言われているそうです。
■ケース② 相続人の仲が良くない
・一人でも協議に反対するとその後の遺産分割はできません。
・遺産分割協議は多数決ではありません。
・相続人だけでなく、相続権のないその配偶者まで巻き込むこともあります。
・分割内容ではなく、「あいつが言うから、反対なのだ」という人もいます。
・父母のどちらかがすでに亡くなっていた場合、事実上最後の相続機会となり一層激しさが増すことがあります。
・遺言がないと遺産分割協議がまとまらない可能性があります。
・相続人には近親者が多いので、過去の感情が吐き出されて激化します。
■ケース③ 相続人同士が疎遠である、「笑う相続人」や代襲相続人がいる
・一度も会ったことがない。
・子どものとき以来だ。
・住所がわからない。
・どんな人なのか、どんな生活をしているのかもわからない 等、話し合いは進みません。
・遺言がないと遺産分割協議がまとまらない可能性があります。
・「笑う相続人」とは、西欧諸国の言葉で、被相続人との関係が希薄だったり、ほとんど無関係に近いにもかかわらず、棚ぼた的に相続財産を取得できるような相続人のことを比喩的に言います。(実際に笑うわけではありません)子どもがいない、両親に離婚歴がある、両親に再婚歴がある等の場合に出てきやすいと言われています。これを避けるには遺言が有効です。
■ケース④ 先妻との間に子がいる、何度か結婚しており子どもがいる
・相続人同士の面識、交流がない。
・連絡先もわからない。
・生育環境が違い感情面でまとまりにくい。
・先妻との離婚原因によって恨まれている。
・遺言がないと遺産分割協議がまとまらない可能性があります。
■ケース⑤ 相続人の人数が多い
・忙しい人、働いている人、遠方の人、病気の人、高齢者等、様々な事情を持つ人が増えることになります。
・連絡をしたり、一堂に会すること自体が難しくなります。
・年齢・職業・心身の状態・生活状況や被相続人との関係性、家族観等が異なり意見がまとまりにくくなります。
(その分、配偶者も増えます)
・ローンをかかえている人、リストラにあった人、子だくさん、子どもの進学費等、生活環境が違い過ぎる場合とまとまりにくくなります。
・遺言がないと遺産分割協議がまとまらない可能性があります。
■ケース⑥ 遺産の種類や数が多い
・相続財産には、宅地、農地、建物、店舗、居宅、借地権、山林、現金、預貯金、株券、貸付金、自動車、家財、骨とう品、美術品、貴金属、宝石、ゴルフ会員権、損害賠償請求権、著作権、借金、住宅ローン等があります。
・財産調査や評価だけでも大変ですが、法定相続割合で分割協議は一致できても、具体的に誰が何を取得するのかは容易ではありません。
・遺言がないと遺産分割協議がまとまらない可能性があります。
・ある相続人に対して「確実にこれを渡したい」という財産がある場合、遺言が必要です。
■ケース⑦ 不動産が多い、あるいは1つしかない。財産が自宅しかない
・法定相続分通り分けられない。
・家・土地を現在誰かが使用中であり、売りに出せない。
・代償金が払えない。
・売却に時間がかかる。売却できない。
・近くに幹線道路ができ、土地の価値が上昇した。
・不動産の個性や評価、愛着、経済価値、利用価値が異なる等の理由から分割は困難になります。
・遺言がないと遺産分割協議がまとまらない可能性があります。
・その結果、不動産は放置され、空き家等として相続関係が複雑になり引き取り手がいないことにもなります。
■ケース⑧ 二世帯住宅である
・全相続人の共有財産になってしまいます。共有化が進みます。
・代償金のために売却の危険性があります。
・遺言がないと遺産分割協議がまとまらない可能性があります。
ケース②~⑧などの理由で遺産分割協議がまとまらない可能性がある場合には、あらかじめ遺言書で相続分を指定(誰がどの財産を相続するかを決めておく)しておくと相続争いを未然に防ぐことができます。
口では「いらないよ」と言っていても、本心からお金の要らない人は一人もいないものです。
したがって、亡くなった後の相続人同士の「協議」よりも、遺言者から理由を付けて「指定」された方が相続人は「受け入れやすい」のです。
もともと自分の財産ではなかったのですから、「そう遺言しているのなら仕方ないか」と、了承する(あきらめる)のに時間はかかりません。
繰り返しますが、遺産分割協議は全員一致でなくてはなりません。
一人でも反対して印鑑を押してくれなければ、いくら相続したくても、そこでストップします。
「後は野となれ山となれ」で子や孫の代にも相続は先送りされ、大変な苦労をすることになります。
(そのときに恨まれるのは、遺言をのこしてくれなかった被相続人かも知れません)
遺言で、あらかじめ相続財産と相続させる人を決めておけば相続人は何も悩む必要はありません。
遺言があれば、遺産分割の話し合いもする必要がなく、あっという間に手続きが終了します。
■ケース⑨ 子どもがいない夫婦(配偶者に全財産を相続させたい)
亡くなった方に親(祖父母)・兄弟姉妹(甥姪)がいた場合、配偶者だけでなく、親(祖父母)・兄弟姉妹(甥姪)にも相続する権利が発生してしまいます。親は1/3、兄弟姉妹は1/4の法定相続分です。
夫婦共同して築いた財産を何の貢献もない親・兄弟に譲るのはさすがに避けたいところです。
この場合、交際の程度にもよりますが、遺言が無い場合、協議は円満には進まないものです。
現在夫婦で住んでいる家・土地・老後資金を手放さなければならない事態さえ起こりえます。
相続は始まってから、何が起こるかはわかりません。後戻りはできません。油断は禁物なのです。
これらを最小限に抑えるためには遺言が絶対必要です。
その際は、万全を期すため、必ず公正証書遺言にしておくべきです。
自筆証書はダメです。自筆証書遺言では検認を受ける必要があります。
その際、共同相続人である兄弟姉妹が相続分が無いことを知ってその真偽を争うことにもなりかねません。
(眠っている相続人を「揺り起こす」ことになります)
明日、何が起きるか分からないわけで、とりあえずお互いに作っておくことをお薦めします。(夫婦共同では作れません)
さらに、2人とも亡くなったときのことまで考えておく予備的遺言も有効です。
『女性のための相続遺言』(総合法令出版)
■ケース⑩ 独身者、一人暮らし、相続人が誰もいない
配偶者、子、親、兄弟姉妹など相続人が全くいない場合、基本的に遺産は国のものになってしまいます。
相続人が誰もいない場合、親族などが家庭裁判所に相続財産管理人選任の申立をし、裁判所によって管理人が選任されます。
ちなみに、標準的な申立のための添付書類をあげると次のものが必要になります。
・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の父母の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(及びその代襲者)で死亡している方がいる場合,その子(及びその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の兄弟姉妹で死亡している方がいる場合,その兄弟姉妹の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・代襲者としてのおいめいで死亡している方がいる場合,そのおい又はめいの死亡の記載がある戸籍(除籍,改製原戸籍)謄本
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票
・財産を証する資料(不動産登記事項証明書(未登記の場合は固定資産評価証明書),預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
相続人がおらず遺言を残さず亡くなった場合、「相続権のない」親族がこれらの書類をわざわざ何十万円もの費用を負担して申立をするのは実際には酷な話です。
お世話になった(なるであろう)親族や譲りたい人(団体)など、遺言で遺産の「行き先」を決めてさえおけば、このような心配はなくなります。
また、特に身寄りのいない一人暮らしの場合は、自分の亡くなったときの葬儀、お墓、遺品整理、各種手続き等を含めて誰かに委託しないとなりません。
遺言で遺言執行者の選任、死後事務委任契約を事前に準備してしておく必要があります。
■ケース⑪ 内縁関係の相手に遺産を遺したい
婚姻関係にない男女間には、互いに相続権はまったくありません。
何十年も一緒に暮らしていたとしてもです。
家や預金を失う可能性もあります。(亡くなった瞬間に、相続人のものになります)
遺言書によって、遺産をのこすことができます。
■ケース⑫ 特定の相続人に遺産を多く残したい、減らしたい、調整したい、「労務の提供」「財産上の給付」「療養看護」した相続人がいる
遺言によって、遺言者は、特定の相続人に法定相続分以上に多く財産を分配するよう指定することができます。
例えば、子どもと言っても、近くにいる子・遠くにいる子・面倒をみてくれた子・親不孝な子・経済的に苦労している子等…子どももいろいろです。
民法904条では、
「相続人中に、被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、共同相続人の協議でその者の相続分とし、協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、寄与をした者の請求により、寄与分を定める。」としています。
実際には、遺言がない遺産分割協議で、親の介護をした子どもへの寄与分が認められるハードルは極めて高いと言えます。
いくら、「子どもの厄介にはならない」と気をつかって言っていても、子どもが面倒みてくれたら嬉しくない親はいないでしょう。
何かと気遣ってくれた相続人に恩返ししたいと思うのは人情です。ここで差をつけないでどこで差をつけるのでしょうか?
したがって、遺言によって介護の感謝の気持ちをあらかじめ遺産として残すことが確実な方法です。
遺言は推定相続人の生活状態を考慮したり、援助したり、お世話になった人への感謝の気持ちをのこすことができます。
この場合、トラブルを避けるために、遺留分に注意したり付言事項を加えておくことが大切です。
『カバチ!!!15』(講談社)
■ケース⑬ 自営業、農業を営んでいる
個人事業や農業を営んでいる場合、相続によって財産が分散してしまい、家業の経営が成り立たなくなるおそれがあります。 これらには、会社を経営していて、自社株を保有している方も含みます。
■ケース⑭ 相続人以外の人に財産をあげたい。
息子の嫁 、娘の夫、再婚相手の連れ子、孫、甥・姪、近隣でお世話になった人、恩人、団体、公共団体などに遺産を遺したい場合には、相続人ではありません。
したがって、法定相続分はありませんから、遺言書で指定するしかありません。
仮に話合いでお世話をしてくれた長男の嫁にあげようという合意をしたとしても、相続人ではないのですから、そのような遺産分割協議書は作ることはできません。
息子が亡くなった後も、いくら生前お世話になったとしても、いくら財産をあげたいと思っていても、遺言が無ければ、打つ手はないのです。
『カバチ!!!15』(講談社)
■ケース⑮ 相続人の中に行方不明者、音信不通、意思能力が低い者、未成年者、海外在住者がいる
遺産分割するには家庭裁判所でそれぞれ不在者財産管理人、成年後見人(特別代理人)、法定代理人等を選任しなくてはならなかったりします。かなりの手間と費用がかかります。
不在者財産管理人は職務上、法定相続分を主張するため、行方不明者のために法定相続分の財産を残す必要が出てきます。
また、遺産分割協議終了後も不在者本人が現れるまで(あるいは死亡が判明等)、不在者財産管理人はその財産を管理しなくてはならず、月数万円の報酬が発生します。これが何十年も続けば相当な出費になりかねません。
これを避けるためには、遺言を遺しておけば、行方不明者以外の相続人に相続財産を遺すことができます。(遺留分減殺請求の可能性はあります)
同様に、認知症の方がいれば、成年後見人を立てなくてはなりません。相続のために一度成年後見人を立ててしまうとその方が亡くなるまで生涯に渡って成年後見人となります。
通常第三者の専門家が成年後見人になることが多いですから、その報酬は財産にもよりますが、月額2万以上ですから年間24万円、さらに10年間で240万円以上の報酬を支払い続けなくてはならなくなりません。同時に家庭裁判所の監督も受け続けます。これは相当の負担です。
■ケース⑯ 財産の内容を相続人が知らない
遺された相続人が生前の財産すべてを把握していることは稀です。
預貯金がどこの銀行にどれだけあるか、不動産の有無、現金・借金はいくらあるのか、連帯保証人になっている等、一番よくわかっているのは遺言者本人です。
相続開始後に相続人の調査によって調べることはある程度は可能ですが、相当な時間、労力、費用もかかります。
結果的に発見できない財産もあるかも知れません。
これを避けるためには、遺言で財産を明記することです。その棚卸しの過程で、誰に何を残したいかもはっきりしてきます。子どもたちにも後片付けの大切さを言ってきたはず?です。「立つ鳥跡を濁さず」で後始末をしておきましょう。
『カバチ!!!13』(講談社)
■ケース⑰ ペットを飼っている
ペットに直接財産をのこすことはできません。
したがって、財産を贈与するかわりにペットの世話を頼むという遺言書にします。
負担付き遺言という形式です。
■ケース⑱ 年齢が65歳を超えた
65歳以上の認知症患者数は500万人を超え、2025年には700万人(5人に1人)と予想されています。
また、年齢が高くなるにつれ、認知症の割合は増加すると予想されています。
80歳以上で24%、85%以上では55%の方が認知症になるとも言われ、今は大丈夫であっても、将来は適切な判断ができなくなるかもしれません。
また、支援や介護を受けない健康寿命の平均は73歳程度です。
65歳を過ぎれば健康寿命はもう目前です。終活は待ったなしで始めていく時期に来ています。
自分が認知症にならない保証はどこにもありませんので、遺言を作るのであれば早めの対応をしておくにこしたことはありません。
兆候が出てからでは手遅れになります。
■ケース⑲ 熟年再婚である
いわゆる「財産めあて」の再婚ではないかと、子どもたちは気が気ではありません。
子どもたちの相続分は確実に減るわけですから、遺言を書いておいた方が無難です。
■ケース⑳ 相続人に一人での生活に不安な人がいる
認知症の配偶者や障がいのある子がいる場合、特に多めに遺産を相続させ、今後の生活の安定を図ってあげることができます。
■ケース㉑ 評価しにくい財産がある
絵画や宝飾品、骨董品の類は評価が定まりにくく、また相続人間でも扱いに困ることがあります。
遺言で指定した方がトラブルを避けることができます。
■ケース㉒ 遺産分割を一定期間禁止したい
被相続人は自分の死亡後、遺産分割について相続人がもめると予想される場合に、遺言によって遺産分割の禁止を指示することができます。禁止の期間は、相続の開始から5年以内の範囲で期間を定めることができます。
■ケース㉓ 被相続人から贈与を受けた相続人がいる
被相続人から婚姻、養子縁組、生計の資本のため贈与を受けたことがある相続人がいる場合は、特別受益が問題になることがあります。
すでに生前贈与された時期から何十年も経っていて、記憶はあるが記録はないといった場合もよく見られます。
そのため、特別受益の主張は、証拠上は認められない一方で、相続人間の感情的な対立を高め、紛争を複雑化させることもありますので、事前の対策として遺言が有効です。
■ケース㉔ 子どもたちの年齢差が大きい
年齢差が大きいと、兄弟間でどちらかと言うと年長者の発言力が大きくなることがあります。
また、誕生したときの家庭の経済状況の差によって、兄弟間で進学費等にかけた金額に差が出る場合もあります。
このような場合は、兄弟での不平等感が相続の際に噴き出す可能性があります。
遺言で、相続分や分割方法の指定、付言で理解を求める、特別受益について触れておくなどの配慮が必要かも知れません。
■ケース㉕ 離婚協議中の配偶者がいる
離婚協議中や離婚訴訟中で、相手方に財産を渡したくないと思っても、離婚が成立していない以上、配偶者には法律上相続権があります。
このような場合、遺言で配偶者以外の方にすべての財産を相続させる内容の遺言書を作成すれば、離婚協議中に亡くなっても、相手方に相続させないことはできます。
ただし、遺留分の問題が残ります。
亡くなった方の財産のうち配偶者には最低限確保できる相続の割合があります。したがって、離婚協議中であった配偶者に遺留分を請求されてしまうと、結局、配偶者に遺産の一部がわたってしまうことになります。
遺留分を主張されると、それに対しては応じなければなりませんが、遺言を残さない限り、相続分を減らすことはできません。
■ケース㉖ 未認知の子がいる
認知とは、婚外子と父親の親子関係を確認するための手続きです。
婚外子がいても、認知をしていなければその子どもとの間に父子関係は認められず、その子どもに相続権はないことになってしまいます。
たとえ、父親が自ら認知しなくても、死後認知請求といって子どもが亡き父に対して認知を請求し、父子関係を証明することで認知してもらうこともきます。
ただし、この方法では遺産分割協議や裁判の長期化など、混乱することが予想されますので、やはり遺言認知を検討しておくべきでしょう。
そこで、生前に認知をしてしまうと、家族との間でトラブルが起こるおそれがある場合、遺言によって死後に認知される方法もあります。
■ケース㉗ 相続人は一人だが、心配だ。
例えば、配偶者は亡くなっており、子ども一人が相続人の場合、他に相続人はいませんから、全て子どもが相続することになります。
したがって、あえて遺言を書く必要はないように思われます。
ところが、相続人ではなくても「押しの強い」兄弟姉妹(子どもから見れば叔父叔母に当たりますが)が無理な要求をしてくることがあります。
「生前、散々迷惑をかけられた」「何かと事業を世話してやった」等子どもの預かりしない話をして財産を要求してくる、あるいは人の好い子どもにつけ込んで来るなどと予想される場合など、「防波堤」としての遺言を残しておく価値はあります。
これ以外にも、①遺産内容の明確化 ②予備的遺言 ③付言といった観点から見ると、相続人が一人でも書いた方がメリットはあります。
結論としては全員が書いた方が良いことになります。(相続人からすると、「書いておいてほしい」ことになります)