●遺言文例ワンポイント
●「その他の財産」
第○条
前条までに記載した以外の遺言者が所有するすべての財産は○○○○に相続させる。
遺言を書くときには、全ての財産を調べて、書き漏れがないようにしなければなりません。
ところが、うっかり調べ漏れがあったり、書き漏れがあったりすることも、どうしても考えられます。
そのような場合、遺言に「書かれていない財産」は相続人全員による「遺産分割協議」で分け方を決めなければならなくなります。
これでは、遺言を書いて遺産分割協議をしなくて済むと思っていても、実際には協議をしなくてはならなくなり、遺言の効果も半減します。
そこで、そのようなことにならないようにするために、前もって、遺言に書きだした財産以外の「その他の財産」についても分け方を書いておくと良いでしょう。
●「動産等の処分」
第○条
遺言者は、遺言者の居宅内における動産、家財・家具及び日常生活で使用していた物品等は、遺言者の妻○○に相続させ、その処分も同人に一任する。なお、処分の費用は妻○○の負担とする。
「建物」と「建物内の動産」を分けて相続させる場合もあるでしょう。
家財などそれほど価値の高くないものも財産ですから、最終的にだれが引き取るのかを明確にしておきます。
●預貯金の指定
第○条
1.A銀行○○支店に対する遺言者名義の預金債権全部を長男○○に相続させる。
2.B銀行○○支店に対する遺言者名義の預金債権全部を二男○○に相続させる。
遺言をした後、時間の経過とともに、銀行の預金額は通常変わっていくものです。
すると、当初の相続分が相続人によって異なってくることがあります。
これを避けるために、銀行ごとに相続人を指定しておけば、銀行ごとの預入金額を変えることによって、遺言を書き換えなくても、相続させる金額や割合を簡単に変えることができます。
したがって、預金の預入金額、残高などは詳しく遺言に書かないようにします。
書かれている金額と実際の金額に差がある場合、トラブルの元になることがあります。
●「相続させる」
第○条
遺言者が所有する自宅の土地及び建物は妻○○に「相続させる。」
遺言で法定相続人に財産を残す場合、「あげる」「分ける」「任せる」等の言葉を使ってしまいがちですが、意味が不明確になってトラブルになる可能性があります。
ここでは、法律上の言葉を使用します。
すなわち、法定相続人に対しては「相続させる」、法定相続人以外の人に対しては「遺贈する」です。
相続人以外の人には、財産を相続させるわけではなく、「遺言による贈与」によって財産を分け与えるからです。
相続人に対しても「遺贈する」という言葉を使うことはできますが、銀行の名義変更や不動産登記で遺言執行者又は相続人全員の印鑑が必要となるなど手間がかかります。(つまり争いが起きた場合、他の相続人の同意が得られず、相続が進まないことになります)
●「相続させる」の場合
遺言書で指定された相続人の署名捺印、印鑑証明書等が必要
●「遺贈する」の場合
受遺者以外の法定相続全員の署名捺印、印鑑証明書等も必要
また、「遺贈する」遺言では登記をしなければ債権者に対して自分の権利を主張することができませんが、「相続する」遺言では登記がなくても債権者に自分の権利を主張することができます。
さたに、遺産が借地権や借家権の場合、「遺贈する」遺言では賃貸人の承諾が必要となりますが、「相続させる」遺言の場合は賃貸人の承諾は不要です。
以上のように、法定相続人に対しては「相続させる」と記した方がメリットがありますので、必ず「相続させる」と書きましょう(相続人に対して「遺贈する」と書いても、遺言自体が無効になるわけではありません)。
似たような言葉で、「与える」「譲る」「あげる」などといった文言を使っているケースもよく見掛けますが、これらは多くの場合「遺贈する」と同じ意味ととられますので、法定相続人に対しては使わない方が賢明です。
なお、以前は不動産の登記申請のときにかかる登録免許税が、法定相続人に対しても「遺贈する」遺言の場合は「相続させる」遺言の場合の5倍とされていましたが、現在は同率とされており、この点での有利不利は無くなりました。
●祭祀主宰者
第○条
遺言者は祖先の祭祀を主宰すべき者として、長男○○を指定する。
祭祀財産の継承する場合、祭祀財産を複数の相続人で分散化してしまうと、法要等の場合に、相続人が祭祀財産を持ち寄るようなことになってしまい、後々不都合が生じると予想されます。
そのため、原則的に1人が祭祀財産を受け継いで管理することになっています。
祭祀承継者を決めるにあたっては、優先的に次の3段階の方法があります。
①被相続人の指定 ②慣習 ③家庭裁判所の判断
また、祭祀財産の種類として、「系譜」、「祭具」、「墳墓」が挙げられています。(民法897条2項)
民法では相続財産と祭祀財産は切り離して考えられており、祭祀を主宰するものとしての祭祀継承者を定めることを義務付けています。
●ペットの世話(負担付遺贈)
第○条
遺言者は下記の財産を○○に遺贈する。
①A銀行B支店の遺言者名義の預金債権全部
②遺言者の飼い犬であるポチ(柴犬・オス)
第○条
○○は前条の遺贈を受ける負担として、愛犬ポチを大切にし、誠実に世話を行う事とする。
第○条
遺言者は本遺言の遺言執行者として、○○を指定する。
財産を遺贈する代わりに、残されたペットの世話をしてもらう遺言です。
遺言者(飼い主)としては、受遺者(新しい飼い主)に預金を遺贈したにも関わらず、負担を履行しない(世話をしない)ことが一番の心配事になります。
ペットのためにちゃんと財産が使われるのか、愛情をもって飼育してもらえるのかは、結局は受遺者にかかっています。
したがって、信頼して預けることのできる人を見つけ、事前に事情を話して、内諾を得ておくことが大切になります。
たとえ、信頼できる人であったとしても(その人にも生活があるので)、ペットの世話をしたくないときが来るかもしれません。
そのようなときでもペットの飼育は、継続してもらわなくては困ります。
途中でペットの飼育を投げ出すことのないよう、それなりの報酬を遺贈することが必要になります。
万一に備えて、遺言執行者が指定されている場合、受遺者が預金だけ受け取ってペットの世話をしないときには、遺言執行者が受遺者に対してペットの世話をするように請求したり、家庭裁判所に遺贈の撤回を申し立てることもできます。
遺言執行者には、亡くなった直後のペットの世話や受遺者への引渡し、定期的にペットが遺言通りに飼育されているかどうか見守ってもらうこともできます。
●遺言執行者の選任
第○条
遺言者はこの遺言の執行者として○○を指定する。
遺言執行者に対する報酬は、遺産総額の○%とする。
どんなに素晴らしい遺言を書いたとしても、遺言がその通り実行されないと意味はありません。
遺言で遺言執行者が指定してあると、遺言通りのことが実現できます。
さらに、遺言を遺言執行者に預けておけば、紛失等の心配はなくなります。
遺言執行者は必ず指定しなければならないものではありませんが、遺言内容が複雑な場合や、何かしら不安があるようなときは遺言執行者を指定しておく方が安心です。
遺言の執行は、遺言に書かれているさまざまな手続きを行いますので、高齢の配偶者にはなかなか難しいでしょうし、仕事で忙しい人も慣れていないと簡単ではありません。
そのようなときは、報酬を支払って行政書士や弁護士などの専門家に遺言執行者になってもらうのが確実で速いです。
●不動産の表記
第○条
遺言者は、遺言者が所有する次の不動産を、妻○○に相続させる。
(1)土地
所在 鹿児島県出水市○○町
地番 1234番
地目 宅地
地積 123.4㎡
(2)建物
所在 鹿児島県出水市○○町1234番地
家屋番号 12番
種類 居宅
構造 木造瓦葺2階建
床面積 1階90㎡ 2階60㎡
不動産を書くときには、土地と建物それぞれの、最新の登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、記載通りに特定します。
注意すべき点は、所在は住居表示の「住所」ではないということです。(不動産登記の際、手間がかかることになります)
また、不動産は「家」とか、「自宅」とは記載しないようにします。
「家」「自宅」と書いた場合、「土地と建物両方」なのか、「建物」だけのことなのか、解釈が分かれトラブルになることがあります。
●遺言者や相続人の表記
第○条
妻○○○○(○○年〇月○日生まれ)に全ての財産を相続させる。
○○年〇月○日
A県B市C町○丁目123番地
○○年○○月○○日生まれ
遺言者 ○○○○ ㊞
遺言書としては名前が書いてあれば、有効です。戸籍どおりの氏名を書きましょう。
ところが、日本中には同姓同名の方がいるかも知れません。
そのため、すべての登場人物を特定し、同一人物のリスクをなくす方法として生年月日、住所を加えて記載しておきます。
●遺言の撤回
第1条
遺言者は、これまでにした遺言を全部撤回し、改めて次条以下のとおり遺言する。
(遺言の撤回)民法1022条
「遺言者は、いつでも、遺言の方式に従って、その遺言の全部又は一部を撤回することができる。」
遺言を撤回する場合、遺言者は新たに遺言を作成し、その遺言で前に作成した遺言の全部または一部を「撤回する」旨を内容にすれば前の遺言は撤回したものとみなされます。
部分的に撤回すると、解釈によってトラブルが起きる場合がありますので、一回、全部リセットすることをお薦めします。
●前の遺言が「自筆証書遺言」の場合
自分で書いた遺言を破棄してしまえば、遺言の存在自体が無くなりますので撤回と同じ効果になります。(民法1024条)
●前の遺言が「公正証書遺言」の場合
原本が公証役場に保管されていますので、遺言者本人が自分の遺言(正本・謄本)を破棄しても撤回になりません。
(公証役場では本人でも「原本」を破棄してもらえませんので、撤回する場合は新たに遺言書を作成して撤回するしかありません)
その際、公正証書遺言だから公正証書遺言でしか撤回できないということではなく、自筆証書遺言でも撤回は可能です。
なぜなら、公正証書遺言、自筆証書遺言に優劣はなく、「一番新しいもの」が優先されるからです。
ただし、自筆証書遺言で撤回する場合、作成上の不備によって遺言が無効になるリスクがあり、その遺言が無効になると「撤回も無効」になってしまいますので注意が必要です。
また、遺言者が、遺言で記載されている財産を処分、破棄、贈与すれば、その財産に限り撤回したものみなされます。(民法1023、1024条)
●遺言執行者の任務
第○条
遺言執行者は、相続人の同意を要せずして、遺言者名義の不動産、預貯金その他の債権等のすべてについて、遺言執行者の名において名義変更、解約、払い戻し、貸金庫の開披、その内容物の収受、貸金庫契約の解約のほか、この遺言の執行のために必要なすべての行為を行う権限を有する。
遺言執行者は、預貯金を相続させるときに、実務上必要になります。
遺言執行者が指定され、その権限を明確にしておかないと、ほとんどの金融機関が素直に払い戻し等に応じてくれません。
結局、相続人全員の署名・捺印を要求され、相続人の誰か一人でも印鑑をくれなかったら、そこでストップです。
これでは、遺言を書いた意味がなくなってしまいます。
したがって、遺言を書くのであれば、遺言執行者をセットで考えなくては、手続きはスムーズに進みません。
また、貸金庫については遺言を書いた時には借りていなくても、今後はどうなるかわかりません。
念のために書いておくと良いでしょう。
●予備的遺言
第○条
遺言者Aは、遺言者の有するすべての不動産を、妻B(○○年○月○日生)に相続させる。
第○条
遺言者Aは、遺言者の死亡以前に妻Bが死亡したときは、遺言者の有するすべての不動産を、C(○○年○月○日生)に相続させる。
(受遺者の死亡による遺贈の失効) 民法994条
「遺贈は、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときは、その効力を生じない。」
また、遺産分割の方法を指定する「相続させる」旨の遺言においても、判例では、「推定相続人が遺言者より先に亡くなった場合、その推定相続人の代襲者やその他の者に遺産を相続させる旨の意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り遺言の効力を否定」しています。(最判平成23年2月22日)
つまり、受遺者の代襲者はいないことになり、その部分は相続人全員による遺産分割協議になります。
結果として、その遺言はなかったことと同じになってしまい、混乱する可能性があります。
これを避ける方法が予備的遺言で、受遺者の万一の際の財産の行き先を決めておくことができます。
●とりあえず遺言
第○条
遺言者は、遺言者の所有する全財産を、妻○○(○○年○月○日生)に相続させる。なお、遺言執行者に上記妻○○を指定する。
○〇年〇月〇日
鹿児島県○○市○○町○○番地
遺言者 ○○○○ ㊞
ここ数日中といった危急的な状況はなくても、人生は何が起きるか分かりません。
そのようなとき、正式な公正証書遺言で遺言を作成したいと思っても、公証役場との日程や内容の調整などで、時間がかかってしまいます。
そこで、次善の応急措置として、とりあえず自筆証書であっても遺言を作成しておけば、遺言を作成しなかったというリスクは回避することができます。
そして、その後、同じ内容の公正証書遺言ができあがれば、自動的に日付の古い自筆証書遺言は無効となり、新しい公正証書遺言が有効となります。
例えば子どものいない夫婦の場合には、とりあえず配偶者に相続させるといった内容の遺言を作成しておけば財産の分散を防ぎ安心です。
●夫婦相互遺言
(夫の遺言)
第○条
遺言者の相続開始時に有する全財産を妻〇〇〇〇(△△年△月△日生)に相続させる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
(妻の遺言)
第○条
遺言者の相続開始時に有する全財産を夫〇〇〇〇(△△年△月△日生)に相続させる。
注意していただきたいのは、この遺言は夫婦別々に各1通ずつ作成することです。同一の遺言書に共同して書いても無効になります。
お互いがどちらかが先立ったとき、相手に財産を残し、安心して老後を過ごせるように同一の内容を相互に遺言しておくものです。
子どもたちには遺留分がありますが、夫婦両方とも亡くなれば、いずれは子どもたちの財産になるのですから、この内容に対して権利を主張しないよう付言事項で理解を求めておくのがポイントです。
●相続人が一人
第○条
遺言者の相続開始時に有する全財産を長男〇〇〇〇(△△年△月△日生)に相続させる。
配偶者がおらず、相続人が子ども一人であれば、他に相続人がいないので、その子どもが全財産を相続することになります。
したがって、普通はあえて遺言を書く必要はないように考えれられます。
ところが、相続人ではなくても、押しの強い兄弟姉妹(子どもから見れば叔父叔母)等が、無理な要求をしてくることがあります。
例えば、「生前、散々迷惑をかけられた」「何かと事業を世話してやった」などと、(欲深さから)子どものあずかり知らない話をして財産を要求してくる、あるいは人の好さにつけ込んで、子どもがそれに太刀打ちできないなどと予想される場合などは、防波堤としての遺言を作っておく価値があります。
●財産の特定
第○条
遺言者は、遺言者が所有する次の不動産を、妻○○に相続させる。
預貯金はきれい相続分で分けることができますが、土地・家屋といった不動産などは、何割を相続させるといった書き方にすると、分割するための協議が必要になってしまいます。
これでは、せっかく揉めないように遺言書を書いた意味が半減してしまいます。そのため、遺言書で誰に、何を相続させるか、すべての財産について特定しておくことがポイントです。
もちろん、相続人が納得いくような公平な遺産配分を考慮します。
なお特定の方法としては、
●特別受益に関する持戻免除
第○条
遺言者は、長男○○に対し住宅資金として200万円を贈与してあるところ、同人の努力にもかかわらず事業不振の状態にあることを考慮し、相続分は上記贈与がなかったものとして算定すべきものとする。
特別受益の持戻しをされると、生前贈与を受けた相続人については、相続時にもらえる遺産が減ることになります。
これを避けるために、遺言者が特別受益についての規定と異なった意思を表示したときは、その意思表示は、遺留分に関する規定に違反しない範囲内で、その効力を有するとされています(民法903条3項)。
持ち戻し免除されれば、生前に贈与を受けた特別受益者でも、事前に受け取っていた財産に加えて、通常通りの相続分を受け取ることができます。
その際、他の相続人に不信感を抱かせないよう、遺言に持ち戻し免除をする理由を一緒に書いておくのがポイントです。
●相続分の指定を第三者に委託
第○条
遺言者は、相続分の指定をすることを次の者に委託する。
鹿児島県出水市○○町1234番地
行政書士 X (〇年〇月〇日生)
第○条
前条で相続分の指定を委託されたXは、相続人の職業、経済状態等の一切の事情を考慮した上で、公平に相続分の指定がなされることを希望する。
遺言によって第三者に相続分の指定を委託する場合は、委託を拒絶することがない方を選ばなくてはなりません。
そのためには、遺言書の作成前に事前に了承を得ておく必要があります。
この場合の第三者とは、相続人ではない人とされています。
その際、指針にして欲しい事柄があれば、それについても遺言のなかで言及しておくことがポイントです。
●相続分割方法の指定を第三者に委託
第○条
遺言者は、遺産分割の方法を次の者に委託する。
鹿児島県出水市○○町1234番地
行政書士 X (〇年〇月〇日生)
第○条
前条で相続分割方法の指定を委託された者は、次に書く私の希望に沿って、遺産分割の方法を決めていただきたい。
(1)相続分は、妻二分の一、長男と二男それぞれ四分の一とする。
(2)長男が妻と同居するつもりがあるのなら、自宅土地・建物は妻と長男の名義とし、共有持分割合の決定は委託されたXに委ねる。
(3)二男はそれ以外の財産の中からその希望するところを優先的に相続させる。
相続分の指定は遺言者自らが行い、遺産分割方法の指定を第三者に委託しておけば、すべての相続財産を把握しなくても遺言者の意思を反映させることができます。
相続が発生してから、指定を受けた第三者が具体的に遺産の分割を指定することになります。
●推定相続人の廃除
第○条
遺言者の長男○○○○は、○○年頃から過度のギャンブルや飲酒に溺れ、遺言者の財産を持ち出して散在させただけでなく、遺言者に対し殴る蹴るの暴力行為を働くなど虐待行為を繰り返すので、遺言者は同人を推定相続人から廃除する。
遺言で廃除を請求するときは、家庭裁判所に対して実際に廃除手続を行ってくれる遺言執行者が必要になります。
裁判所は廃除原因となる行為が実際にあったのかどうか、関係当事者から事情聴取をし、証拠資料の調査を行います。
したがって、遺言に書いたから必ず排除されるというものではありません。
廃除する理由の裏付けとなる証拠をきちんと残しておく必要があります。
●推定相続人の廃除の取消し
第○条
遺言者は、長男○○○○について推定相続人の廃除をしていたが、素行も改まり、真面目な生活に戻ったので、同人の前途を考慮し推定相続人の廃除を取り消す。
遺言によって、廃除の取消しをすることができます。この場合は、遺言者の死亡後に、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の取消しの申立をしなくてはなりません。
廃除の請求と違って、取消にはその理由は必要としていませんが、その取消の意思が遺言者の真意であることが分かるように、なぜ取り消すのか理由を遺言に書いておくとよいでしょう。
●遺産分割の禁止
第○条
遺言者は、遺言者の預貯金を全額妻に相続させる。
第○条
遺言者が所有する不動産については、二男が大学を卒業するまで遺産分割を禁止し、卒業後に、法定相続分によって分割する。
遺産分割禁止の遺言は、相続人の利害や便宜についても配慮する必要があります。
例えば、未成年者がいる場合、成年に達すれば代理人を就ける必要もありませんから、相続開始後すぐに行う遺産分割より、より円滑に行えるということも考えられます。
したがって、遺言で遺産分割の禁止をする場合は、なぜ禁止するのかその理由についてもふれておいた方が良いでしょう。
遺産分割を禁止した場合は、それだけでは遺言者の遺産分割の意思が完結しません。そこで、遺産分割禁止の他に、その後の相続分の指定等についても書いておく必要があります。
●共同相続人の担保責任を定める
第○条
遺言者の財産の分割により取得する全ての財産について、数量不足や破損等の瑕疵があった場合、妻○○が一切の担保責任を負担するものとする。
相続人の相続財産に何らかの問題が生じた場合、他の相続人が共同してその相続分に応じて責任を負うことになります。
このような場合、相続人間で担保責任について揉める恐れがあります。
そこで、担保責任を特定の相続人に全部負わせておくことで、トラブルを回避するものです。その際、担保責任の負担に見合う財産を取得させておくのがポイントになります。
●動産を相続させる
第○条
遺言者は、遺言者の有する下記の絵画を長女A(生年月日)に相続させる。
記
作品名 ○○
製作者名 ○○
種類 洋画
寸法 ○○号
縦 ○○センチメートル
横 ○○センチメートル
製作年 ○○年
絵画、書画、盆栽、貴金属の場合は、その特徴を掲げて、できる限り特定します。鑑定書等があればそれを参考にします。
また、自動車の場合であれば、自動車検証、自動車登録事項等証明書の記載に従い特定します。
●建物の賃借権を相続させる
第○条
遺言者は、遺言者がA(住所)に対して有する下記建物の賃借権を、妻B(生年月日)に相続させる。
記
所在 ○○
家屋番号 ○○
種類 居宅
構造 木造瓦葺平屋建
床面積 ○○平方メートル
相続が開始すると建物の賃借権も共同相続人の準共有状態となります。
推定相続人の仲が悪いような場合は、賃借人の亡くなった後、借家関係に支障をきたし、賃借人と同居してきた者の生活が不安定になる可能性もあります。
亡くなった後も安定した生活ができるよう賃借権について遺言しておきます。
なお、この場合、敷金返還請求権も賃借人の地位に付随して相続されます。