●財産管理等委任契約
財産管理等委任契約とは、加齢や病気・ケガ等で長期入院・長期療養となった場合や、寝たきり・体が不自由になって外出が困難になった場合などに備え、親族や信頼できる知人に依頼して、預金を引き出したり、 治療費や家賃を支払ったりしてもらうことができる契約です。
その際、代理人に依頼することの範囲をあらかじめ決めて書面にしておくことで、その都度「委任状」を書かなくても、その人に代理してもらうことができるようになります。
財産管理等委任契約には特別なきまりはありませんが、財産管理等を依頼する本人(委任者)に判断能力があることが必要です。
代理人は、委任者が自由に選ぶことができますし、必ず公正証書にしなければならないわけでもありません。
また、財産管理等委任契約はたいてい契約締結と同時に委任事務が開始され、監督人は付きません。
判断能力のある本人自らが受任者を監督し、不正があったら解任するというのが前提の契約だからです。
委任内容は、大きく「財産管理」と「療養看護」の2つに分かれます。
財産管理とは、受任者が委任者の財産を適切に管理することです。
具体的には、身の回りの物品の購入、金融機関からの預貯金の引き出し、家賃や光熱費・税金の支払い、保険の契約や解約・請求などとなります。
これに対し療養看護とは、医療や介護など、委任者の心身を保護するために必要な事務処理全般を指します。具体的には、入院・退院時の手続きや介護保険の要介護認定の申請、介護サービスの契約手続きや解除・支払いなどになります。
つまり、自分の財産の管理やその他の生活上の事務の全部または一部について、代理権を与える人を選んで具体的な管理内容を決めて委任するものです。
財産管理等委任契約は、委任者に判断能力があることが大前提ですので、委任者の後見開始によって終了することになります。
その場合、以降の財産管理等は、任意後見契約によって任意後見人によってなされることになります。
財産管理等委任契約は契約締結後すぐに効力が生じるというメリットがある半面、本人の判断能力が衰えても本人自身が任意後見開始の申し立てをするわけではないので、受任者の監督機能が失われ、受任者による不正使用を防止できないというデメリットもあります。
その場合には、受任者を監督するものとして、本人が信頼できる者を置くのも、本人を保護するために効果的と考えられます。